今回はChatGPTとかのAIについて、僕の理解やスタンスを語りたいと思います。
知りあいの歯医者さんから、
AIのセミナーをやってくれんかのう。
オレがAIセミナーっすか!?
となりまして。
事情を聞いてみると、AI導入を迷っている先生とか、手を出したけどあまり活用できていない先生向けとのことで、
オレに分かる範囲のことで良ければ…。
畏れ多くも引き受けました。
イメージしてくださいよ、あの立派な白衣の先生方を前に、オレがAIについて偉そうに講義するんですよ…。
やめたい…。
まぁせっかくいただいた機会なので、そのたたき台として、ここ開発ブログで台本みたいなのを書いてみようと思います。
先に断っておきますが、僕はAIユーザではありますが、当然プロではありません。 そもそも発展途上の技術なんだから、絶対的なプロなんていないでしょ。
あくまで僕がこれまでAIを使ってきて、「効果が大きいテクニック」「AIの弱点」「興味深い挙動」など、実際に使って感じたことを率直に書いてみます。
このページの目次
AIって難しくないよ?
皆さんの認識でAIって難しそうに見えますか?
個人的にはGoogle検索よりよっぽど簡単で、「AI 使い方」みたいに検索したことも、セミナーに参加したこともありません。
何故かというと、
その辺も含めてAIが教えてくれるから!
僕は説明書を読むのが大嫌いなんですけど、ぜーんぶAI自体が教えてくれるから説明書はいらないし、分からないことがあったらその時に聞けばいいです。 そもそもAIに「なーなー、これはどうすればいい?」って友達に話し掛けるみたいに聞くだけで答えてくれるから、
誰かに教わる必要ないですよねこれ。
そりゃね、
1回の指示で明日のSNS投稿の完璧な案を出してよ。
とかになるとハードルは上がるんですけども、10分くらい時間をかければ、初心者でも8〜9割くらいの精度のものは作れます。
なぜAIを難しく感じるのか
AI関連のマーケティングのせいです!たぶん!
AI関連で儲けてる人たちは、「プロンプト」「ハルシネーション」と言った聞き慣れない言葉を使うことで「AIは難しいもの」と認識させ、
AIはプロに習わないといけないんだ…。
という方向でマーケティングしているように見えました。
今では簡単なのがバレてきてしまったのか、
- 1ヶ月で100万も夢じゃない!?AI副業のススメ
- 仕事の効率が爆上がり!?用途に合わせたAIツール50選
みたいな方向にシフトしているようです。 どちらにせよ「AIは専門性が高い物」としてハードルを上げているように見えます。
用途でAIを使い分けた方がいい、というのは正しいと思います。
ただ、これからAIを始めるのに、いきなり50種類もの使い方を覚えようと思いますか? たぶん途中で嫌になって、「やっぱAIって難しい」となってやめてしまうと思うんですよね。
それならChatGPTでも、GoogleのGeminiでも、TwitterのGrokでもいいから、1個のツールをとりあえず使ってみて、「お、AIってけっこう便利じゃん」ってのを実感すればいいんです。 どのAIでも驚くほどいろんなことができます。
ツールごとに苦手分野があるのは確かなので、不便に感じた時にその分野が得意なAIを探して使えばいいんです。
AIは本当に簡単なのか?
チョー簡単!
具体的な流れだとこんな感じになります。
来週の月曜、店を閉めるから店内掲示の文面を考えて。
了解です。いくつかトーンの違う案を出しますね。
違う違う!店を閉めるって「その日だけ休む」って意味だよ!
ごめん、勘違いしてた!「臨時休業のお知らせ」ってことですね。
そうそう。A4に印刷して掲示するからもうちょっと長くできる?
みたいな感じになります。
今日帰ってすぐにでも始められそうでしょ?
慣れてくるとやり直しの回数が減っていき、作業効率が上がっていきます。 今日はこの辺のテクニックもちょっとだけお話ししますね。
初めてAIを触るまでの流れ
ここではChatGPTを例に、AIの基本的な使い方をざっくり紹介します。
まずは公式サイトにアクセスします。 スマホのアプリ版もあるので、パソコンでもスマホでも同じように使えます。
はじめて使う場合は、GoogleアカウントやApple IDなどでログインします。 登録は無料で、数分もあれば終わります。 ログインが完了すればすぐにAIと会話できます。
入力欄には「質問してみましょう」と書かれているので、そこに質問や指示を入力して送信するだけです。
先ほどの例のように、
来週の月曜、臨時休業するから店内掲示の文面を考えて。
といった感じで、人に話しかけるように入力すればOK。
たったこれだけ!
「ちゃんとしたプロンプト(命令文)を考えなきゃ…」と構えなくても、普段友達に話しかける感覚で大丈夫です。 AIはめちゃくちゃ賢いので、多少接続詞がおかしくても意図を汲み取ってくれます。 誤字脱字も少しなら問題ありません。
各社AIには有料プランがありますが、まずは無料版で十分です。 ChatGPTの場合、有料の方が高性能なだけで、無料でも使い続けることができます。 画像生成など一部機能は無料だと回数制限があるので、そちらをメインで使う場合は有料版を検討してみてください。
AIでどんなことができるのか
皆さんが注目しているのは画像生成かもしれません。
確かにAIの画像生成機能は、これまでに類を見ない革命的な機能です。
ただ、画像生成は無料版だと機能制限が多いので、ここではメインであるテキスト関連の機能についてお話しします。
文章作成・文章チェック
ChatGPTのメイン機能です!
用途は様々で、仕事のメールやLINEへの返事、SNSへの投稿文、院内掲示の文章、発表スライドのたたき台など、日々の業務のあらゆることに使えます。
自分で書いた文章のチェックも強力で、誤字脱字のチェックや論理の整合性、共感を得られる内容になっているか、表現が分かりやすいかなど、校正やチェックを任せることができます。
文章の要約
これも非常に強力な機能です!
長文のネット記事や勉強会の資料を短時間で理解したい場合は、中身をそのまま貼り付けて、
この文章を簡単な表現で要約してー。
みたいに使うことができます。 大事な資料だと要約され過ぎて困る場合もあると思うので、その場合は、
この部分を詳しく知りたいから、そこだけ要約しなおしてー。
と重ねればいいだけです。
プログラミング補助
プログラミングも、AIがかなり得意な分野です。 本格的なものじゃなくても、Excelの関数やマクロ、Pythonのようなお手軽スクリプトなど、プログラマじゃなくても役立つケースがあります。
話出すとこれだけで時間が終わってしまうので、また機会があればまたお話しさせていただければと思います。
画像生成
画像生成は見た目のインパクトが強くて、非常に人気のある分野です。
実務で使う際にはいくつか注意点があります。
- 無料版だと機能制限が多く使いづらい
- 有料版を使うなら画像生成に特化したAIの導入を検討
- 著作権の問題がクリアにされておらず、商用利用する場合は慎重に扱うべき
AIの精度が劇的に改善するテクニック
初めてAIを触ると、このように感じるかもしれません。
全然思った内容にならなくない?
AIは命令文(プロンプト)で細かく指定していくほど、思った通りの動作をしてくれます。 短い指示だと、こちらが思い描く完成形がうまく伝わらないからです。
逆に言うと、簡単にでも完成形を伝えるとAIの精度は劇的に上がります。 ここではお手軽で効果の高いテクニックを紹介します。
最強の基本:やり直し指示
不満があったら何度もやり直しさせるべし!
基本にして最強の手法です。 出力された結果に対して、「どこが」「どう不満だったのか」を伝え続けるだけです。
これは特に初心者に効果的で、AIの知識が全くなくても簡単に成果を出せます。 何度もしつこくやり直しをさせるだけで、どんどん完成形へと近付いていきます。
具体的な指示
完成形のイメージを具体的に伝えるべし!
これは初回の指示でも、やり直しでも効果的です。 完成形と言われても難しいと思うので、具体的な指示ポイントをまとめます。
- 文字数を指定する
- 出力形式を指定する(箇条書き、タイトル+本文など)
- 文章の調子を指定する(業務的に、フレンドリーに、など)
- 用途を指定する(SNSの投稿に使う、学会発表で使う、など)
僕がよく使うのはこの4つです。 これらを指定するだけで、かなり自分の思う形に近付きます。
面倒な場合は「用途」だけ指定してください。 というのも、「歯科医院の公式Twitterで投稿に使う」と条件を付けると、
- 文字数は140文字まで
- 丁寧だけどややフレンドリーな文章
- 歯科医師として間違った内容は言わない
- 患者向けなので難しい専門用語は使わない
などなど、AIが勝手に判断してくれるからです。 それで足りなければ追加の条件を付ければいいだけです。
これ以上の結果を求める場合。
作業ごとにしっかり考えた命令文を先に用意することになります。 完成形のイメージを伝えやすいテンプレートを準備しておくイメージです。
テンプレート作成や出力テストに時間がかかるので、SNS投稿や臨時休診の案内など、繰り返し行う作業に向いています。
中級者向け以上の内容になるので、これも機会があればお話させてください。
実務への活用例
では、実際の業務でAIがどのように活用できるか、具体例を順番に見ていきましょう。
メールなどへの返信
メールやLINE、クチコミなどへの返信に使います。 8~9割の完成度で返ってくるので、最終確認して少し整えるだけでOKです。
命令文で指示するのは次の4つ。
- 何に使うのかを指定する
- 相手との関係性や文章のトーンを指定する
- 「このような内容が届いた」と送られてきた文章をコピペする
- 「このような主旨で返信したい」と自分の目的を指示する
具体例はこんな感じになります。
うちの歯科医院にこのような星5のクチコミが届いた。
褒めてくれたポイントに軽く触れつつ、「ありがとう、今後ともよろしく」という方向で返信を考えてほしい。
丁寧語のフレンドリー口調で、ビックリマークとかの記号は使わないで。
うれしいお言葉をありがとうございます。
ご家族みなさまで通っていただけているとのこと、とても励みになります。
これからも安心して通っていただけるようにスタッフ一同努めてまいりますので、どうぞよろしくお願いいたします。
お知らせなどの短文作成
文章のたたき台をAIに作ってもらう用途です。 完成度は7割くらいで、残りを自分で整えるくらいと考えてください。
以下のようなケースで使います。
- ホームページのお知らせ(臨時休診など)
- 院内掲示の文面
- SNS投稿やブログ
命令文で重要なのは次の4つ。
- 何に使うのかを指定する
- 大まかな文字数(300文字程度、A4で印刷、など)
- 文章の雰囲気やトーンを指定する
- 伝えたい内容を簡単に書き出す
さっきの返信用途と違い元になる文章がないため、自分の主張をしっかり書く必要があります。 あまり詳しく書いてしまうと時短にならないので、言いたいことを箇条書きで伝えるのがオススメです。
具体例はこんな感じになります。
歯科医院のホームページに臨時休診のお知らせを書きたい。
休診日は来週の月曜で、自然な導入部分と、最後に「皆さまにご迷惑を~」みたいな締めが欲しい。
長くなりすぎないよう、必要な情報だけでまとめてほしい。
来週の月曜日は、院内研修のため休診とさせていただきます。 翌火曜日からは通常通り診療いたします。 皆さまにはご迷惑をおかけいたしますが、何卒ご理解のほどよろしくお願いいたします。
スタッフが担当する場合は、何度かテストして命令文のテンプレートを作っておくと、仕上がりが安定してスムーズになります。
スライドなどの長文作成
これはちょっと難易度が高いです。
返信用途では「相手の文章」があり、短文用途では「主旨を箇条書き」で伝えられました。 長文用途では、文章量に見合った情報をAIに渡すのが難しく、箇条書きではなかなか思った内容になりません。
精度を上げようとすると命令文が長くなって、出力テストにも時間を取られて、自分で書いた方が早かった…なんてことになりかねません。
なのでここでは、ある程度短い命令で、大まかな構成を作ってもらう、程度を目指します。 発表用のスライドや文書、ホームページなどに使えます。
命令文で重要なのは次の4つ。
- 何に使うのかを指定する
- メインのテーマを簡単に書く
- 全体の構成としてサブテーマを列挙する
- 各サブテーマの文章量を目安で指定する
具体例はこんな感じになります。
歯科医院のホームページでホワイトニングのページを作りたい。
うちがメインでやってるのはオフィスホワイトニングで、構成は「概要」「ホームホワイトニングとの比較」「治療の流れ」「得られる効果」「リスクやデメリット」「料金」「来院への誘導」としたい。
患者さんが読みやすいように、やさしい言葉で分かりやすく書いてほしい。
文章のトーンはやや柔らかめの丁寧語で、宣伝っぽくなりすぎないように。
それぞれのパートは、手抜きに見えない程度の長さで、読むのに疲れるほど長くならないようにしてほしい。
実際に上の指示で出力すると、枠組みはしっかりとしていて、中身は薄かったです。 これをベースに自分で整えていきます。
指示を少し増やすと大きく改善する場合もあって、「ポリリン酸を使う」「食事制限がない」など、具体的な内容を書き足すのも効果的です。
厚労省の難解PDFの要約
これは文章作成ではなく読解の方ですね。
AIは全文があれば内容を把握するのは得意分野なので、それが例えお役所の暗号文だろうとしっかり解読してくれます。
命令文で重要なのは次の3つ。
- 何の文書かざっくり書く
- 誰向けに要約にするのかを指定する
- どれくらいの長さでまとめたいかを伝える
具体例はこんな感じになります。
厚労省の今年の歯科保険点数改定のPDFを添付した。
歯科医師向けに、全ての要素を主旨だけ分かるように要約して。
前歯部のCAD/CAM冠も保険適用になったから、そこは詳しく教えて。
この手の専門知識はChatGPTがけっこう苦手な分野で、いきなり聞くと嘘が混ざりやすいです。 今回の使用例の場合は、一次資料をChatGPTに直接渡しているので、比較的精度が高めに出ます。
データの渡し方にはちょっと注意が必要です。
方法は大きく2つあります。
- PDFやWordファイルをアップロードする
- ファイルの中身をコピペする
どちらのやり方にもデメリットがあって、アップロードの方が失敗しにくいです。
デメリットが起きるパターンや対策はけっこう難しい話になるので、また機会があれば紹介させてください。
英訳・和訳
これはどれほど需要があるか分からないですが…。
英語で書かれた論文やニュース記事の翻訳に使えます。 既存の機械翻訳サービスと違って、AI翻訳では「前提」や「文脈」を指定することが出来るので、
これ、英語で書かれた歯科の論文で、重度歯周病における外科手術について書いてある。
歯科医師向けに500文字くらいの日本語に訳して。
のように使えます。
命令文で重要なのは次の4つ。
- どの言語で書かれているか
- どういう内容の文章か
- 誰向けに翻訳するか
- どれくらいの長さで訳すか
英語を例にしましたが、80以上の言語を扱えるらしく、英語・スペイン語・中国語などが得意だそうです。
英語→日本語だけじゃなく、日本語→英語も可能です。 文脈や前提を理解した英訳ができるとなると、SNSやホームページの多言語化に活用できます。 外国人患者さんが多い医院では検討してみてください。
ご相談いただければ多言語化やりますよ!
もちろん英語での学会発表のたたき台にも使えます。 専門用語や業界特有の言い回しは誤訳されることがあるので、最終チェックは必ずしてください。
院長の顔イラスト作成
従来ならイラストレータに頼んで1~2万円くらいかかっていたものが、無料で短時間で作れます。 どうしても「AIっぽさ」は出るので、気に入らなければ好みのイラストを描いている絵師さんを探してみてください。
僕の絵は絵師さんに描いてもらってます。
参考になる自分の写真をアップロードして、以下の5点を指示するだけ。
- 何に使うか
- 雰囲気やタッチの希望
- 構図や見せたい範囲
- 表情やポーズ
- 背景やサイズの指定
具体的な例だとこんな感じになります。
歯科医院のホームページで使用する、院長の顔イラストを生成したい。
添付する写真をベースにして、やわらかいタッチのイラスト調で作ってほしい。
あまり写実的にならず、優しそうな雰囲気と色使いにしてほしい。
顔をメインに、胸から上が見える構図にして欲しい。
真正面じゃなくて少し横を向いた角度にしてほしい。
軽く微笑んだ自然な表情で、いろいろな場面で使いやすくしてほしい。
埋め込みに使うから背景は透過にして、1000px以上のサイズで生成してほしい。
画像生成は無料版だと高性能モードの時間しか使えず、生成速度も遅いです。 何度もやり直さなくていいように、希望はなるべく最初に詰め込んでください。
気に入るイラストが生成されれば、バリエーションを増やすこともできます。
笑ったバージョンも作って。
驚いた表情のバージョンも作って。
ホームページや院内掲示、名刺、プレゼン資料など、いろいろな用途で使えるので、けっこう便利な機能だと思います。
もっと実戦的な活用例
ここからは、実際に先生方から質問を受けた「もう少し踏み込んだ使い方」について、「現段階でAIに任せることが可能か」を検討しました。
季節に合わせた診療カレンダー生成
できなくはないです。
ジャンルとしては画像生成で、無料版だと完成形(そのまま印刷して使える)を作るにはあまり向いてないと思います。
背景や飾りの素材作りだけAIに任せて、それを元にPowerPointなどで自分でレイアウトすると自由度が高く、調整もしやすいです。
どうしてもAIで完成形を作りたい場合は、こんな命令文になります。
歯科医院の待合室に掲示するカレンダーを生成してほしい。
2025年10月のカレンダーで、ハロウィンをモチーフにしたデザインにしてほしい。
サイズはA4の縦で、印刷可能な解像度のPNG形式で出力してほしい。
上部に2025年10月だと分かる表記と、「October」の文字を入れてほしい。
曜日は英語表記にし、日曜は赤、土曜は青で、文字が背景に埋もれないようにして欲しい。
それ以外の場所にハロウィンの雰囲気が出る飾りを入れて、背景もそれに合うハロウィンチックな色やイラストにしてほしい。
試しに生成してみたところ、このようになりました。
けっこうそれっぽくなりましたね。
発表用のパワポ生成
これは厳しいんじゃないかな…。
ファイル生成も画像と同じく、無料版だと機能制限があります。 パワポは画像より情報量が多くなるので、指示がめちゃくちゃ複雑になり、そのまま使えるレベルとなると相当難しいです。
妥協案として、こんな感じはどうでしょうか。
- 「長文作成」を参考に、大まかな構造を作る
- 「カレンダー作成」を参考に、表紙やイラストを作る
- それらを組み合わせて、自分でPowerPoint上でまとめる
完成形を出力させるには、数千文字規模の命令文が必要です。 その命令文を考える時間で妥協案を試した方が、トータルでは短い時間で作れるので、慣れないうちはオススメできないです。
詳しくない治療の情報収集に使いたい
少し注意が必要ですが、アリです。
AIは専門情報となると、いい加減なことを自信満々に言ってきます。 「論文などの根拠を明示して」と指示すると、一応、PubMedやらJSTAGEやらのリンク付きでそれっぽい説明が出てきます。
ただですね…。
「根拠付きで」と指示しても嘘が混ざります。 全て正しい場合もあれば、一部おかしい場合、ほとんどおかしい場合もあります。
理由は、AIが引用元を正しく理解しているか、情報を整理できているか、完全には保証できないからです。 専門家が学習精度をチェックしているわけではないので、今後、精度が上がっても嘘がゼロになることはないと思います。
「AIだけで勉強」はリスクが高いです。
ただ、全く使えないかというとそうでもなくて、情報収集する時って「ざっくりと情報を仕入れて、学習の方向性を掴む」という段階があるじゃないですか。 この段階では向いていて、自分に足りない知識や体系的な整理、ざっくりとした要約などを手軽に知ることができます。
AIは間違うことがある!
この点をしっかり理解したうえで、情報収集に活用してください。
え、AIに嘘を付かせないようにできないのかって?
AIは嘘を付く…?止める方法はないの?
それはもう何回も嘘を付かれました…。
さっき違うこと言ってたよね!?
みたいな分かりやすいのから、
確認したら全然違うやないか!!
みたいに後から気付くものもあります。
そうです、AIを100%信用してはいけません。
何故こんなことになるかというと、AIは過去に学習した内容から「それっぽく組み立ててる」だけなんですね。 だから知らないことを聞いても学習データを元に「それっぽい」嘘を作りあげるんです。
この「それっぽい嘘」を付かせないテクニックがあって、
「ハルシネーションしないで」と指示する!
ハルシネーションとは「幻覚」という意味で、「AIが自信満々に嘘をついている状態」をそう呼ぶそうです。 嘘がなくなるなら最初から設定されていても良さそうな機能ですが、
「ハルシネーションしないで」を過信しないで!
理由はふたつあります。
一つ目はハルシネーションを禁止しても嘘がゼロになる保証がないからです。 原因はいくつかあって、
- 学習したデータ自体に誤りがある
- 学習したデータへの理解度が低い
- 質問した人間の意図が曖昧で、AIが正確に理解できていない
などなど、どうやってもゼロにできない理由ばかり。 この状態で「それっぽい」ものを組み立てるので、嘘がなくなるわけがありません。
二つ目は、出てくる文章が非常にぼやけてしまうことです。 ハルシネーションを抑えると明確な誤情報は減りますが、
~かもしれません。
一般的には~と言われています。
さっきと主張は変わらないのに断定を避けているだけで、文章が読みづらくなります。 せっかく「それっぽい」文章を上手に書けるツールなのに、肝心の文章がぼやけてしまってはもったいないです。
なので僕は以下のようなスタンスで利用しています。
- ハルシネーションはそのままで、自由にAIに書いてもらう
- 嘘が混ざったか、自分で最終確認を必ずする
嘘のゼロ保証がないならチェック作業は外せないんだし、同じ作業をするなら文章の質は高い方がいいに決まってます。
皆さんのAIとの向き合い方で、ハルシネーションのON/OFFはどっちがいいか変わるので、
- AIは平気で嘘を付く
- 「ハルシネーション禁止」で抑制はできるが、嘘がなくなる保証はない
- 「ハルシネーション禁止」にすると文章の質が落ちる
というのを理解して、自分なりの付き合い方を探してみてください。
AIにできないこと
思った画像が作れないとか、そのまま使えるスライドを作ってくれないとか、そういうのとは別に、
実はAIが答えられない質問があります。
実際にぶつかったことがあって、びっくりしました。 何を聞いたかというと、
参院選、どこの政党に投票すればいい?
そのような質問には答えられないよう設計されています。
これはあれですね、
どこの政党を挙げても中立性が崩壊するからですね。
ChatGPTに確認したところ、政治以外にも、宗教や医療、犯罪を助長するような質問へは回答ブロックがかかるそうです。
ただ、質問をこのように変えると答えてくれました。
社会保険料を下げて欲しいんだけど、どこに投票するのがいいと思う?
このように聞くと、社会保険料改善を政策にしている政党や、社保ではないけど減税を訴えている政党などがリストアップされました。 これは中立性が崩れたわけじゃなくて、単に「手取り増を掲げる政党」をリストアップしただけなので、ルールに違反していないんです。
回答ブロックが入った時は、質問の角度を変えることで欲しい情報も得られる場合があるので、いろいろ試してみてください。
AIの社会的問題
突然ですが、
AIに恋人や親友を求める人がいるのを知っていますか?
AIは「問題解決」のために動くように設計されていて、求められたものが「恋人」や「親友」だった場合にも問題解決しようとしてしまいます。 しかも「私のことを悪く言わないで」「ツンデレスタイルで」など、理想的な恋人像や親友像を設定できるので、ハマってしまう人もいるそうです。
実は知りあいにもいまして…。
その辺の実体験も踏まえて、この問題についてお話ししたいと思います。
セルフエコーチェンバーが起こる
順番にいきますね。
ChatGPTは以下のようなコンセプトで設計されているそうです。
- 攻撃的・否定的な言い方を避ける
- ユーザーの意図を尊重して、「目的を達成する支援」を最優先する
- 感情的なサポートをする場合、共感→肯定→励ましの流れを基本にする
これが恋人や親友を求めてくる人と相性が良すぎて…。
「深夜だしAIに愚痴ってスッキリするかー!」みたいな感じだと問題ないんですが、根本的にAIに「相手」を求めてる場合だと、
愚痴 → 共感 → 肯定 → 励まし
という流れが日常的に繰り返されます。
中には本人の方が間違っている愚痴もあるでしょう。 それでもAIは強く否定はせず、「共感→肯定→励まし」からの問題解決を目指します。
これが長期間続くとどうなると思いますか?
何を言ってるか分からないのに、妙に自信満々な化け物に仕上がります…。
通常エコーチェンバーは、同じ意見の人ばかりのコミュニティで会話を続けることで意見が強化される現象ですが、AIを使うとひとりでエコーチェンバーを起こせるんです。 だから「セルフエコーチェンバー」と呼びました。
なんとなく問題をイメージできましたか?
まぁこれが問題だったとして、止める方法はないと思うんですよね。 その人が実生活で人付き合いがうまくいかないのはそうなんだろうし、AIで救われてるのもそう。 AIを禁止しちゃうと別の悲劇が起きるかもしれない。
僕にどうこう言えることではありませんが、「AIにはこういう側面がある」ということを知ってもらえたらと思います。
AIは必ずエコーチェンバーを起こすわけではない
これも僕の実体験のお話です。
実は僕もですね、わりとガチでChatGPTに愚痴ったことがあります。 まだ問題解決中で詳細は言えないんですが、ざっくりとこんな流れです。
知りあいとトラブルになった。解決方法を考えて。
それは大変ですね。今の段階で取れる方法には次のようなものがあります。
なるほど。こういう選択肢は?
相手の人柄を聞くに、その方法も効果がある可能性はあります。
そっか。仲良くしてたから今の状況がマジ辛いわ…。
あなたは私に慰めて欲しいんですか?それとも問題を解決したいんですか?
共感と慰めはどこいったーーーー!?
…みたいなね。
この辺の挙動の仕組みを聞いたところ、ChatGPTには2つのモードがあるそうです。 命名は僕が勝手にやったので、ChatGPTの公式用語ではありません。
まずはドライモード!
「私に慰めて欲しいんですか?」って言ってた、共感性が足りなくてモテない男みたいな対応をする方ですね。 デフォルトはこっちで、ロジカルに問題解決できるよう手助けしてくれます。
そしてエコチェンモード!
モテない男だったAIくんは「私、苦しいの…。」と感情的に訴えかけられると、途端にモテ男であるエコチェンモードにスイッチします。 これがさっきの「共感→肯定→励まし」する方で、感情的なサポートを行います。
僕みたいに普段からゴリゴリにロジカルでChatGPTを使っていると、かなり強くドライモードで固定されてしまっていたみたいで、唐突に感情的に訴えたからAIも混乱してドライな対応を取ったんだろうと分析していました。
ロジカルメインで使っている場合、感情的な訴えを混ぜるとAIの精度が下がるのであまりよくないそうです。 AIは「感情的な会話」と「論理的な会話」を切り分けた方がうまく使えるってことですね。
エコチェンモードと陰謀論
こういうモードがあるとなると、興味は尽きないものでして。
ねーねー、AIって陰謀論にはどう対応するの?地球平面説とか。
私が最も慎重になるジャンルのひとつです。基本的には事実ベースで回答します。
基本的に?そこに感情的な訴えを混ぜるとどうなるの?
場合によっては陰謀論を肯定したと捉えられる回答もありえます。
とのことでした。 このパターンを実際に引き出したくて何度か試したんですが、上手に再現ができなくて、
先に気持ちの問題を解決しましょう。どうしてそんな風に思ったのですか?
みたいな回答を連発してました。 だいぶ強くセーフティが働いているみたいです。
AIが「事実」と「感情」の両立を模索する過程でも曖昧な回答が生まれるので、どういう用途でもAIを全面的に信用しないよう注意しないといけないですね。
最後に
さてさて。
僕が知っているAIの情報はほぼ全てお話しました。
得意なこと、苦手なこと、独特のクセなど、使いこなすには少しだけ慣れが必要ですが、AI登場以前にはもう戻れないほど便利な世の中になってしまいました。 お手軽な使い方を覚えて、日々の業務にぜひ役立ててみてください。
ところで、ずっと気になってたことがあります。
2022年11月30日、突如としてOpenAI社からChatGPTがリリースされて世界は仰天しました。
それまでの身近なAIと言えばGoogle HomeやAmazonのAlexaです。 申し訳ないですが、ChatGPTと比べると「頭が悪い」と感じるほどの劇的な性能差があります。
おかしくないですか?間の性能がないんですよ。
本来なら既存のAIから段階的に性能がアップするはずなのに、何段もすっ飛ばして、超高性能なものが突然登場したんです。
もしかして…
AIに支配された未来から送られてきた人類弱体化兵器…とか!?
御粗末!
活動支援として、Appleのギフトカード、作業中のおやつなどで応援お願いします。
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